金属アレルギーの人がインプラント治療を受けるときの注意点を解説!
失った歯を補う治療法のひとつにインプラント治療があります。顎の骨にインプラント体を埋め込むために手術を行う必要があるものの、隣の歯を削ったり負荷をかけたりせずに、審美性や機能性を回復させることが可能です。
インプラント治療を検討されている方のなかには「金属アレルギーでもインプラント治療は受けられるの?」という疑問をおもちの方がいるのではないでしょうか。
そこで今回は、金属アレルギーでもインプラント治療は受けられるのか解説します。金属アレルギーの方がインプラント治療を受けるときの注意点と治療後にアレルギーの症状が現れたときの対処法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
金属アレルギーとは
金属アレルギーは、金属に触れることで生じる接触皮膚炎のことですが、ただ金属に触れただけで発症するものではありません。汗や唾液などと金属が接触し続けると金属から金属イオンが溶け出し、皮膚のたんぱく質と結合することで、体が異物とみなして拒絶反応を起こします。
金属アレルギーにより引き起こされるのは皮膚症状だけではありません。頭痛や肩こり、めまいなどの症状が引き起こされるケースもあります。
そもそも、アレルギーは免疫反応のひとつで、アレルゲンが体の中に入ると免疫反応により体内に抗体が産生され、マスト細胞にくっつきます。このマスト細胞とくっついた抗体にアレルゲンが反応することで、アレルギー症状が現れるのです。
元々は金属アレルギーでなかった方でも長時間金属に触れることで、ある日突然金属アレルギーを発症するケースもあります。
下記では、口腔内と全身に現れる金属アレルギーの症状について解説します。
口の中に現れる金属アレルギーの症状
金属が入っている部分の口腔粘膜がただれたり、痛みや腫れが生じたりします。また、舌にまだら模様や扁平苔癬(赤紫色の小さな粒々)ができたり、唇が腫れたり味覚を消失したりすることもあるようです。
ただし、金属アレルギーと診断された方のうち口腔内だけに症状が現れた方はわずか2.3%で、ほとんどの方は全身に症状が現れています。
参照元:令和3年7月29日厚生労働省第14回アレルギー疾患対策推進協議会資料「歯科金属アレルギーと医科歯科連携」
全身に現れる金属アレルギーの症状
全身症状には、湿疹・掌蹠膿疱症・水泡・身体のかゆみ・皮膚の紅斑などがあります。掌蹠膿疱症とは、掌や足の裏に膿疱と呼ばれる皮疹が多くみられる状態で、掌蹠膿疱症を発症する方の20〜30%は金属アレルギーが原因と考えられています。
金属アレルギーで注意しなければならないのがアナフィラキシーショックです。アナフィラキシーショックを起こすと短時間で死に至る可能性があるため、全身に蕁麻疹がでている・呼吸が苦しい・下痢・嘔吐、腹痛などの症状がある場合は速やかに歯科医師に相談しましょう。
参照元:公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「掌蹠膿疱症」
金属アレルギーでもインプラント治療は受けられるの?
金属アレルギーの方で、インプラント治療を受けたいと考えている場合「金属アレルギーだとインプラント治療は受けられないのでは?」と、不安に思う方も少なくありません。実は、金属アレルギーの方でもインプラント治療は受けられます。
なぜなら、インプラント治療で使用するインプラントの人工歯根はチタンだからです。チタンは人工関節にも使用され、人体と馴染みやすい特徴があるため、金属の一種でありながら金属アレルギーの症状が現れにくいとされています。
チタンは空気に触れると表面に酸化被膜を作るため、汗やリンパ液に触れても金属イオンが溶け出す心配がありません。
金属アレルギーの人がインプラント治療を受けるときの注意点
金属アレルギーの方でもインプラント治療は受けられますが、治療を受ける際は下記の3つのことに注意しましょう。
金属アレルギーであることを歯科医師に伝える
金属アレルギーのある方や疑いのある方、金属アレルギーが心配な方は、カウンセリングの段階でその旨を必ず歯科医師に伝えましょう。
これは安心してインプラント治療を受けるために重要なことで、被せ物に金属の含まれていないものを提案してもらえたり、金属アレルギーがあるのかを検査してもらえたりします。
検査方法の代表的なものはパッチテストです。パッチテストとは、金属試薬を含ませたシール状のパッチを皮膚に貼り、アレルギー反応が出るかどうかをチェックする検査のことです。
パッチテストで、金属アレルギーがないと判断されれば、安心してインプラント治療を受けられます。
純度の高いチタンを採用する
インプラントの素材選びは非常に重要です。一般的に使用されるチタンは、金属アレルギーを引き起こしにくいとされていますが、すべての人に安全とはいえません。なぜなら、チタン製とはいってもすべてのインプラント体がチタン100%ではないからです。
人工歯根の耐久性を高めるために、アルミニウムなどほかの金属を数%程度混ぜることがあります。ほかの金属がわずかに含まれるだけで金属アレルギーを引き起こす可能性があり、なかにはチタンの比率が低いインプラントも存在します。
混合物の割合が多いと、金属アレルギーを引き起こすリスクが高くなります。そのため、できるだけチタンの純度が高いものを選び、金属アレルギーのリスクを回避しましょう。
金属を使用しない素材を選択する
金歯や銀歯などの金属を使用した上部構造を選択すると金属アレルギーの症状が現れる可能性があります。事前に歯科医師に金属アレルギーであることを伝えておけば、金属を使用しないものを提案してもらえます。
上部構造に使用されるセラミックやジルコニアは陶器なので、金属アレルギーの方でも安心して装着可能です。また、審美性にも優れているため、天然歯に近い見た目を再現できます。
インプラント埋入後に金属アレルギーの症状が現れたら
インプラント治療後に突然金属アレルギーの症状が現れるケースがあります。突然、アレルギーの症状が現れたら、どのように対応すればよいのかわからない方も多いはずです。
以下では、インプラント治療後に金属アレルギーの症状が現れた際の対処法をまとめています。
速やかに歯科医院を受診する
インプラント治療後に金属アレルギーの症状が現れたら、速やかに歯科医院を受診しましょう。
口腔内ではなく全身にアレルギーの症状が現れた場合は、インプラントが原因とは気づきにくいケースもあります。全身にアレルギー反応が出た場合でも、原因はインプラントということがあるので、まずは担当の歯科医師に相談しましょう。
原因となる金属を取り除く
アレルギーの原因となっている金属を除去しなければ、再び金属アレルギーを引き起こす恐れがあります。そのため、アレルギー反応を引き起こしている原因がインプラントである場合は除去する必要があるでしょう。
人工歯の素材が原因となっている場合は、人工歯のみを交換することで改善するケースもあります。
しかし、人工歯根に使用されるチタンが原因で金属アレルギーの症状が現れている場合は、除去しなければなりません。チタンアレルギーの場合は、除去後もインプラントを埋め込めないため、入れ歯やブリッジなどの別の治療法を選択する必要があります。
まとめ
インプラント治療を検討されている方のなかには、金属アレルギーを不安視する方は少なくないでしょう。インプラントには、一般的に金属アレルギーを引き起こしにくいチタンが使用されます。
しかし、金属アレルギーのリスクがゼロだとは言い切れません。そのため、金属アレルギーのある方や金属アレルギーに不安のある方は、インプラント治療の前に歯科医師に必ず相談してください。
必要に応じて、パッチテストなどのアレルギーテストを受けることで、安心してインプラント治療を受けられるでしょう。
インプラント治療を検討されている方は、千葉県流山市にある歯医者「ABC歯科クリニック」にお気軽にご相談ください。