インプラントが難しい5つの症例と対応方法を解説!
歯を失った際の治療法としてインプラントを選択すると、見た目が美しことに加え、ご自身の歯と同等の噛む力が手に入ることが大きなメリットといえるでしょう。 しかし、インプラントは口腔内の環境や健康状態によっては治療が難しい場合があります。
今回は、インプラントが難しい5つの症例と、それぞれの対応方法について解説します。
インプラントが向かない人やインプラント以外の選択肢もご紹介しますので、インプラントを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インプラントとは?
インプラントとは、歯を失った部分の顎の骨にインプラント体を埋め込み、連結部としてアバットメントを装着して人工歯を被せる治療法です。
インプラント体には、チタンやチタン合金が使用されます。チタンはアレルギーが起こりにくいうえに耐久性が非常に高く、骨と結合する性質を持っています。インプラントだけではなく、歯科医療においては幅広く使用されている素材です。
埋め込まれたチタンが顎の骨と結合するため、ご自身の歯と同等の噛む力が手に入ることが大きなメリットといえるでしょう。人工歯にはセラミックやジルコニアを使用することが多いため、白く美しい歯を再現できます。
インプラントが難しい5つの症例と対応方法
インプラントには多くのメリットがありますが、残念ながら希望したすべての人が受けられる治療ではありません。
インプラントが難しい5つの症例と、それぞれの対応方法について解説します。
骨量が足りない症例
インプラント治療では、顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込む必要があります。骨が少なく薄い症例は治療が難しいでしょう。埋め込んだインプラント体は顎の骨と結合することで定着しますが、土台となる顎の骨量が足りない場合、インプラント体と顎の骨がうまく結合できません。
また、骨量が足りない状態でインプラント治療を受ける場合、手術後にぐらつきや抜け落ちが起きる可能性があります。
対応方法
土台となる顎の骨の量が足りない症例でも、以下の治療を受けることでインプラントを受けられる場合があります。
ただし、骨量の不足を補う治療は外科治療であるため、費用や身体的な負担がかかるでしょう。
ソケットリフト
上顎の骨量を増やすための手術です。骨の高さが5mm以上ある場合に選択されます。
サイナスリフト
ソケットリフトと同様に、上顎の骨量を増やすための手術です。骨の高さが5mm以下の場合や、多くの歯を失っている場合に選択されます。
GBR(骨組織誘導再生法)
特殊な材料を注入し、骨の再生を促す治療です。粉砕した自家骨を使用する場合もあります。
ソケットプリザベーション
抜歯直後に人工骨を充填する治療です。顎の骨は、噛む刺激などを受けることで厚みや量を維持しています。抜歯後は刺激がなくなるので、時間が経つと顎の骨が痩せます。
抜歯後、顎の骨の骨量・厚みが減少することを防ぐために行われる治療です。
スプリットクレスト
骨を分割し、広げたすき間にインプラント体を埋入する手術方法です。通常は穴をあけてインプラントを埋入するので骨の厚みが十分にないと行えませんが、分割して埋入するスペースを確保するのでインプラントを受けられる可能性が高まります。
インプラント体と顎の骨のすき間は、骨補填剤で満たして骨の再生を促します。
虫歯や歯周病がある症例
虫歯が複数本ある、歯周病が進んでいるなど、口腔内の状態が悪い症例は、インプラントが難しいことがあるでしょう。口腔内の状態が悪いままインプラントを行うと、治療箇所の細菌感染のリスクが高まるからです。
特に、重度の歯周病の場合、インプラント周辺の組織が歯周病菌に感染し、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が非常に高いです。インプラント周囲炎になると、インプラントと顎の骨の結合を阻害するほか、インプラントのぐらつきや抜け落ちを引き起こすリスクがあります。
対応方法
インプラントの前に、虫歯や歯周病の治療を行いましょう。虫歯や歯周病の治療を優先するとインプラント治療の開始が遅れますが、口腔内の環境を整えることはインプラントを維持するうえで非常に重要です。
全身疾患を患っている症例
インプラントが難しくなる全身疾患は、以下のとおりです。
・骨粗しょう症
・高血圧
・糖尿病
・腎臓病
持病がある場合、免疫力が低下し傷の治りが遅くなるため、インプラント治療が難しいことがあります。
特に、糖尿病の場合、免疫力が低下することでインプラントと顎の骨がうまく結合できない場合が多いです。術後にインプラント周囲炎に感染するリスクも高いため注意する必要があるでしょう。
また、重度の腎臓病で人工透析を受けている場合、インプラントの治療箇所だけではなく全身に細菌感染を引き起こすリスクがあります。インプラントを受けることはできません。
対応方法
持病がある人でも、服薬や生活習慣の改善によって病状が安定していればインプラントが可能です。持病をお持ちでインプラントを受けたい人は、まずはかかりつけ医に相談してください。
重度の場合は難しいですが、軽度の腎臓病であればインプラントを受けられる可能性があります。
未成年・妊娠中の症例
未成年や妊娠中などの症例は、インプラントを受けられません。顎の骨が成長途中の未成年の場合、インプラントを受けることで顎の成長を阻害する可能性があるためです。
また、インプラントはレントゲンやCT撮影などの精密検査、麻酔、外科処置、投薬などを伴うため、妊娠中の人も受けられません。
対応方法
未成年はインプラントを受けられませんが、顎の成長が止まった段階で治療は可能です。顎の成長段階は精密検査で判断するので、定期的に歯科医院を受診し開始時期を相談してください。
妊娠している人はインプラントを受けられませんが、出産・授乳が終われば治療可能です。
ただし、インプラントは平均して6か月~1年程度かかる治療です。出産直後の不安定な時期ではなく、精神的にも身体的にも落ち着いた段階で受けたほうがよいでしょう。
喫煙している症例
インプラントは口腔内の状態が悪いと長持ちしにくいため、喫煙者の症例は治療が難しいことがあります。タバコの成分によって歯茎が血行不良を起こし、細菌感染を起こすリスクが高いからです。
特に、喫煙している人は歯周病やインプラント周囲炎に感染しやすいといわれています。
対応方法
喫煙しているとインプラントは難しいですが、禁煙することで治療が可能になる場合が多いです。ご自身で禁煙することが難しい場合は、禁煙外来を受診するとよいでしょう。
インプラントが向かない人
骨量や健康状態に問題ない人でも、インプラントが難しいことがあります。
メンテナンスに通えない人
インプラントを快適に長く使い続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。定期メンテナンスに通えない人は、インプラントは難しいでしょう。
インプラントを失う多くの原因は、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎は歯周病と同じく、インプラント周囲のケアが不足していることで起こるため、毎日の歯磨きと歯科医院での定期メンテナンスで日頃から予防することが重要といえます。
インプラント治療に対して保証を設けている歯科医院が多いですが、定期メンテナンスを受けることが条件とされているのが一般的です。メンテナンスを怠ってインプラントにトラブルが発生した場合、保証が受けられません。
インプラントを快適に長く使い続けるためには、何も症状がなくても3〜6か月に一度はメンテナンスを受けてください。
麻酔をしたくない人
恐怖心があって麻酔を使用したくない場合、インプラントは難しいでしょう。インプラントは外科処置を伴うため、麻酔なしでは行えません。
麻酔による痛みは、歯茎表面の傷みと麻酔液が入る痛みの2種類にわけられます。表面麻酔や、電動の麻酔針を使用するなど、痛みを緩和する方法はあるので歯科医師に相談するとよいでしょう。
歯並びが悪い人
口腔内の状態や健康状態に問題がなくても、歯並びが悪い場合はインプラントが難しいことがあります。歯並びや噛み合わせに問題がある状態でインプラントを受けた場合、下記の症状が現れる可能性が高いです。
・人工歯の破折
・インプラントのぐらつき
・インプラントの抜け落ち
・インプラント周囲炎
インプラントが受けられない・向かない場合の別の選択肢
インプラントが受けられない・向かない場合の選択肢は、以下のとおりです。
ブリッジ
ブリッジとは、失った歯の両隣の歯を削って連結した被せ物を装着する治療法のことです。インプラントとは異なり、保険適用の対象になるため費用の負担が少なく、外科処置の必要がないことが大きなメリットでしょう。
インプラントが難しいとされる、糖尿病や高血圧などの持病がある人でも選択できる治療方法です。
しかし、両隣の健康な歯を削る必要があること、両隣の健康な歯への負担が大きいこと、虫歯や歯周病になりやすいことなどのデメリットがあります。ブリッジは入れ歯のように簡単に取り外せません。ブリッジの下にある歯の清掃ができず、虫歯や歯周病の原因になるのです。
また、ブリッジは歯のない範囲が多い症例には難しいとされています。奥歯を失っており両隣に土台にできる歯がない症例や、支える歯の状態が悪い症例などは、ブリッジでは対応できません。
入れ歯
入れ歯とは、歯茎を支えにした取り外し可能な義歯で歯を補う治療法です。幅広い症例に適応できることがメリットといえるでしょう。
また、入れ歯には総入れ歯と部分入れ歯の2種類があります。1本のみ補いたい場合や、すべての歯を失った場合も対応できます。
しかし、入れ歯の噛む力はブリッジに比べると弱いです。噛みにくさや不快感があることがデメリットでしょう。特に、上顎の入れ歯の場合、歯茎を覆う部分が広いです。発音のしにくさや異物感が生じるでしょう。
部分入れ歯の場合、残っている歯を支えにして入れ歯を固定するため、支えにする歯に負担がかかります。金具が見えるため、審美性も低いです。
まとめ
インプラントは、顎の骨にインプラント体を埋め込む外科処置が必要な治療です。骨量が足りない、持病があるなどの症例は、治療が難しいことがあります。
また、インプラントを快適に長く使い続けるにはケアが欠かせません。メンテナンスに通えない人も治療が難しいといえるでしょう。
ただし、インプラントが難しいと判断された場合でも、追加で治療を受け、口腔内の環境を整えることで治療が受けられることがあります。
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